50MHZ デルタループ・アンテナ2種の紹介

 手軽に出来て性能も出る2種類のデルタループアンテナを紹介します。一つはマッチング回路不要のシングル・デルタループ、もう一つは指向性のある2エレメント・デルタループです。こちらもマッチング回路素不要の仕様で設計してみました。

シングル・デルタループ

 シングル・デルタループは、製作が容易で性能も良いアンテナですが、ネットなどの製作記事では、

1)3つの辺を同じ長さで作る場合(正三角形型)、

2)下二辺を直角に配置している場合(直角三角形型)

の2つが、多く紹介されています。特に2)は製作面の要請からこうなっているかと思いますが(水道用の機材が使えるために)、今回はマッチングに重点を置いて、部品が少ないシングルデルタループを考えてみます。

 この2つのデルタループをMMANAで計算してみると、それぞれがインピーダンス=120オーム、および140オームとなることが分かります。放射パターンと利得は、ほぼ同じです。

 下2辺の角度が広がるとインピーダンスが上がることから、逆に狭める方向で考え、50オームを目指したのが、今回提案する二等辺三角形型です。斜辺の長さを釣り竿で実現しやすい2.5mと考え、およそ3:3:2に取りました。

 MMANAの計算結果は期待通り50オームとなり、マッチング回路無しで行けそうなことが分かります。また、若干ながら利得が上がり、打ち上げ角が下がっていることが分かります。

【製作編】 容易に入手できる材料で、まずは試作的に作ってみました。

[材料]

①釣り竿二本 グラスファイバー製の小笹や白滝Vなど 2.5mの長さが取れるもの

②VP13やVP16など、水道用エンビ管 60cmほど (釣り竿の径に合わせる)

③アルミ板 厚さ1mm 10cm*20cm程度 と、リベット数本

銅線 エナメル線φ0.8mm程度の物 6.7m

⑤小型プラスチックBOX

⑥M型コネクタ・メス

【結果】

 上部水平エレメントは長さ1.62m、左右のエレメントは2.51mで、全長6.64mです。

 アダプタの部分は、写真を参考にしてみてください。アルミ板とリベットを使って、塩ビ管3つを固定します。

 実際に制作してみると、上のエレメントに引っ張られて釣り竿が内側にしなります。そこで、それを考慮して、下図の寸法で計算をやり直してみました。 

 

【最終結果】

 上部水平エレメントは長さ1.4m、左右のエレメントは2.58mで、全長6.56mです。

 この場合、釣り竿2本を支えるパイプの角度は、tan0.63/1.5=0.42から、46°程度にしています。(この角度でアダプタを製作すると良い)

 

  デルタループは平衡型のアンテナで、このまま引き込み用同軸ケーブルでリグに繋ぐことも可能ですが、例のチョークコイル付きの同軸での引き込みをお推めします。

(50MHZ移動用なら、チョークのコアはFT-114コア程度で十分)

 

 今回はFT8を考え50.300MHZ付近を中心周波数にしましたが、50~51MHZくらいまで、十分使えます。(SWR実測値を図にしてみました)

 

 重さは400gでした。畳んだときの最大長さは、小滝の場合は42cmでザックに入ります。

※使う釣り竿の根元の太さで、アダプタに工夫をします。細い場合は、下の写真のようにφ13mmくらいのアルミパイプを挿入して径を合わせる場合も・・・。

 

【調整について】

 基本的に調整不要です。適応周波数範囲が広いです!

 もし周波数合わせするなら、エレメントのエナメル線を少し長めに設定しておき、どこかで少し捩る。エレメントは釣り竿に緩く巻き付け、先端部はガムテープかインシュロック(タイラップ)で釣り竿に固定します。

【性能面】

 ダイポールよりも遥かに良いです。 ZLスペシャルやHB9CVほどの切れはありませんが、倒れてもしっかり聞えているような不思議なアンテナです。ループは、そういう面で優れていると思います。八丈島でカメラ三脚に載せて運用した時は、Eスポなしで山口局と安定して交信が出来ました。

50MHZ バタフライビーム(変形2エレデルタ)

[狙い]

 ビームアンテナとしては多レメントYAGIやキュビカル・クワッドが性能の良いアンテナですが、移動運用時に設置が大変なのが難点です。デルタループは設置が容易で、高さが低くても打ち上げ角が低い。移動運用では1エレメントでも十分に思いますが、軽量で出来ることから、もう少し高利得が期待できないか、と考えて、バタフライビームなるアンテナを考えてみました。(部品を減らすため、ブームがないタイプを試みました)

 [構造説明]

 通常の2エレメント・デルタループは、輻射器と反射器の2つのループが0.2λ程度の間隔で並んだ構造をしています。この場合、ほどほどの長さのブームが必要となって、ブームと三角のエレメントを固定するのに工夫が必要です。HFのアンテナなどはエレメントの長さが長いので、強度のある部品を製作をしますが、50MHZ程度のアンテナの場合は、もっと小型で軽量のパーツで済ませられないかと思いました。

 エレメントの長さは、以下のように設定しました。

1)輻射器 2.2m+2.22m+2.22m

2)反射器   2.3m+2.33m+2.33m

 正三角形型のデルタループです。2エレの場合は反射器の影響でインピーダンスが下がって、ほぼ50オームとすることができます。MMANAの結果は下の図のようになり、かなりの利得が期待できます。(通常の構造のデルタループとほぼ同じ)

[制作]

  釣竿4本が必要です。50MHZ用では、長さが2.5mあれば大丈夫で、今回は手元にあった小笹(3.1mもしくは3.6m)というグラスファイバータイプの釣竿を使いました。

 また、中心部分の支えとなる場所に、水道管のジョイントユニットかVP13塩ビパイプと1mm厚のアルミ板で、写真のようなアダプタを作りました。

(塩ビやアルミ板はリベット止めしています。寸法図を別途示します。いわばこれが、小型ブームのような感じです)

 

 アダプタ1、アダプタ2は2個ずつ作ります。アルミ板はできれば5052として、硬いものがお勧め。アダプタ2は、灰色部分で折ります。赤い穴の辺りにφ3.1の穴を開け、リベットで止めます。写真を参考にしてください。

 

 エレメントは普通のビニール被覆電線かエナメル線か、なんでも良いです。

 長さはMMANA計算結果では、

・給電エレメント=2.22m*3

・反射器エレメント=2.33m*3

だったのですが、実際は少し短めの方が良いかもしれません。若干の寸法調整で、周波数を合わせます。試作では、

・給電エレメント=1.92m*3

・反射器エレメント=2.13m*3

ほどで、目的周波数(50.3MHZ)に合ってしまいました。

 ちなみに、給電側のエレメントのみではSWR=1.7になりますが、反射器を設置するとスッと下がって、SWR=1.0(R=55Ωほど X=0Ωほど)となりました。

 エレメントは普通のビニール被覆電線かエナメル線か、なんでも良いのですが、竿に沿わない部分はφ0.8mm程度の径のエネメル線でないと垂れ下がってしまいますので、少し工夫が必要です。(電力が多めの時は、寄り線にするのも手です)

 

 

 今回は、輻射器はシングル・デルタループの部品を流用しました。Mコネや小型BOXもそのまま使っています。

 

 出来上がりは写真のような感じです。いつものように、カメラ三脚上に立てています。設置は大変容易で、10分ほどで出来上がり。マッチング回路が何もないため(図の三脚の辺りにMFJ-259Bがぶら下がっている)、エレメント長さでの周波数調整のみになります。

 重さは三脚を除くと、470gほどでした。

 

 山中の移動では、方々からの反射のせいかビーム方向がはっきりしませんでしたが、回転によるサイドの切れは感じています。

 

 

 

*************ここ以下は、元の原稿(残している)***************

50MHZ バタフライビーム(変形2エレデルタ)

[制作意図]

 YAGIアンテナもキュビカル・クワッドも大変性能の良いアンテナですが、移動運用時に設置が大変なのが難点です。

 その点、デルタループは設置が容易で、特に1エレメントの場合は釣竿二本で済みますので、私も海外運用ではよく利用していました。が、クワガタ型の構造で普通の給電をすると、40度以上の打ち上げ角となって、その点は不満でした。

 それで今回、高利得で設置が容易、しかも国内コンテスト(50MHZ)で使える水平偏波、打ち上げ角が低い、というようなアンテナはないものかと思案し、バタフライビームなるアンテナを考案してみました。

 [構造説明]

 ワイヤーで作るビームアンテナに、バードゲージという、キュビカルクワッドの給電点を、反射器の(導波器でも良い)エレメントに近づけて設置した構造のアンテナがあります。

 また、5Aスペシャルと言って、変型菱形の二つのエレメント構造ですが、同じく給電点が反射器(もしくは導波器)と非常に近いアンテナがあります。

 通常、ビームアンテナでは、給電するエレメントと反射器や導波器は、平行に並べて設置するのですが、重量を減らしたり、パーツを減らす目的で、折り曲げ型の構造が取られたものかと推察します。

 

 これらのアンテナにヒントを得て、今回はブームが不要の2エレデルタビームを考えてみました。MMANAでの図面を右上に示します。正三角形の二つのエレメントが、蝶々が羽を広げたような格好で並んでおり、給電点付近で、二つのエレメントが接近しています。

 [MMANA計算結果]

 図のようなビーム波形が得られ、性能はほとんど2エレデルタと同じでした。

 また、2つのエレメントが近づくために、インピーダンスが下がって、マッチング回路なしで給電が可能です。

(今回は、給電点手前にソータバランを入れています)

[制作]

  釣竿4本が必要です。50MHZ用では、長さが2.5mあれば大丈夫で、今回は手元にあった小笹(3.1mもしくは3.6m)というグラスファイバータイプの釣竿を使いました。

 また、中心部分の核になる場所に、水道管のジョイントユニットと1mm厚のアルミ板で、写真のようなアダプタを作りました。(リベット止めしています)

 

 エレメントは普通のビニール被覆電線かエナメル線か、なんでも良いです。

 長さはMMANA計算結果では、

・給電エレメント=2.22m*3

・反射器エレメント=2.33m*3

だったのですが、実際は

・給電エレメント=1.92m*3

・反射器エレメント=2.13m*3

ほどで、目的周波数(50.3MHZ)に合ってしまいました。

 給電側のエレメントのみではSWR=1.7でしたが、反射器を設置するとスッと下がって、

SWR=1.0(R-55Ω+X=0Ω)となりました。

※ 反射器の長さは、多少調整要と思います。今は長めになっています。

 

 出来上がりは写真のような感じです。いつものように、カメラ三脚上に立てています。設置は大変容易で、10分ほどで出来上がり。マッチング回路が何もないため(図の三脚の辺りにMFJ-259Bがぶら下がっている)、エレメント長さでの周波数調整のみになります。

 重さは三脚を除くと、470gほどでした。

 

※今回は最初、14MHZで計算しました。(周波数が違うだけで、同じような結果が出た)

 HFのハイバンドでも無論使えると思いますが、かなり広い空間占有をしますので、狭い我が家では実験はしておりません。

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