妹が亡くなって一と月が経ちます。90を過ぎて亡くなった両親とは違って、私より若い年で亡くなったこともあり、いまだにジンと胸が痛みます。

　

　6年前の4月、オーストラリアでの半年間の英語での研修を終えて日本に戻った時、あまりにやつれた感じがしたので、大丈夫かなあ？と思ったのですが（御柱祭に合わせて実家に戻ってきました）、5月に入って右目がかすむ、などの不具合で眼科の診療を受けました。

 

　しばらく診てもらっても原因が分からなかったのですが、大学病院で細かく診てもらったところ、目の奥に髄膜腫が見つかり、急遽、手術を受けることになりました。

　大学病院の日程が詰まっているということで8月に手術、その際に右目の視力を失いました。（私も手術前に先生から説明を受けた時にMRI写真を見たのですが、腫瘍が大変大きく、私ならこの時点でもう諦めていたろうと思います）

 

　その後、社会生活に戻って会社にも勤め、業務を続けていましたが、2年ほどして手術部位に痛みが出るようになり、放射線での治療を実施、一旦はほぼ腫瘍は消えたのですが、年のオーダーでは再び腫瘍が大きくなってきて、結局3度の外科手術を受けました。2021年10月、遂に左手・左足に麻痺が出始め、その後も病院で療養を続けましたが、この2月、帰らぬ人となりました。

 

　大学は応用生物学科で修士課程を修了、その後、横浜に研究所がある大手の化学メーカー（製薬部門があった）に就職しました。普通は「修士での採用はしない」というところを自分から頼み込んで面接に出かけて行くアグレッシブな人でした。たまたま行き会ってくれた所長さんと意気投合、臨時採用が適った次第です。

 

　研究所では胃癌の研究に従事し、努力の甲斐あって医学博士号を取得。30代後半で課長代理の職にあって、チームメンバーと共に胃癌の治療薬を世に出すところまで漕ぎつけました。

　ピアノが弾け、中学時代はブラスバンドでフルートを、着物の気付けの資格を持ち、英語が出来て世界を歩いて癌学会での発表もして、というスーパーウーマンでした。

 

　残念なことに、彼女が40代半ばの頃、会社が資金面の問題から製薬部門を他の製薬会社に身売りし、チームは解散となって、研究対象も向精神薬へと移ってしまいました。

更に、新会社はエイズ問題で苦しんだＭ製薬と合併するような局面となり、遂に彼女はそこに居ることはできないと判断、退職して暫く派遣社員をしていました。

　その後、千葉にある中堅の製薬会社に勤めが決まり、プロセス管理・特許関係の仕事をするなど、その会社では重要な業務を任されて活躍していました。

 

　端から見て、正直なところ、頑張り過ぎです・・・。私の3倍も頑張っているように見えました。後から聞くに、徹夜をするような場面も多々あったようで、それでは誰だって、身体が持ちませんでしょう？

　

　私が40代に具合を悪くした頃、或る病気診断士の人に見てもらったことがあります。彼はミリ波を試験者の身体に当て、その反射波で病気の原因を診るような装置を使って原因を探っていました。でも、最終判断は匂いで診ていたようです。年間、700名ほど診て、分からないのは3例くらい。お医者の人が自分が癌かもしれない、と彼を訪れることもあったそうです。

　その彼が言うには、「ガンセンターの先生は50代で亡くなる人が多い・・・」

要は、彼らは責任が重いうえに、激務なのだそうです・・・。

 

　人間、これだけの大きさの身体しかない生き物です。無理はやっぱ、できないんです。何事にも自信のある人は往々にして無理をしがち。人生の短さを惜しんで、凄い勢いで生きて行くのかと思いますが、そういう生き方をすると長生きは難しい・・・。

 

　最初の会社で元気に活躍している頃、彼女は家で、2匹のワンちゃんを飼っていました。ヨークシャーテリアのテスワン（メス）と、シェトランドシープのＢちゃん（オス）です。このワンコたちが物凄く可愛いく、その頃の彼女は生活も安定し充実していたし、休日はお散歩にもいっぱい出かけていた。日々、笑顔が多かったです・・・。

 

　亡くなった時の写真を祭壇に残すケースが多いかと思いますが、私としては幸せ感に包まれていた、その頃の写真を選んで残したいと思いました。

　二匹のワンコは私にも懐いて、その頃は日々、凄く幸せを感じていました。

 

　今、彼女はワンコちゃんと一緒に、天国の花咲くお庭を、笑顔で散歩しているのではないかと思っております。