移動向きマイクロバートアンテナの制作 (実際には、短縮型コブラアンテナとでも言う方が正確かもしれません)

 2018年のハムフェアで「移動向きマイクロバートアンテナ」を紹介したところ、「原理的なことは分かったけれど、具体的な制作方法が知りたい」との意見をいただきました。

 ここでは、原理的なことについても載せますが、制作編のみで良ければ前半は飛ばしていただき、後半から読んでいただければ良いかと思います。質問はいつでもOKです。

(ハムフェア資料だけでは内容が不十分かとは思いますが、一応以下にダウンロードできるようにしておきました)

 

 MVアンテナは、CQ誌の海外コンテスト欄を担当されているJE1SPYさんから紹介いただいて、大変重宝に使用させていただいております。

MVアンテナ資料-ハムフェア改.pdf
PDFファイル 412.1 KB

[マイクロバートアンテナとは?]

 JA1SCEさんの以下のHPに詳しいです。

http://www.ja1scw.jp/hp/HamMVantenna.html

 

(上記の資料では、「ラジエータとカウンターポイズ」という言葉で説明がなされておりますが、中間に置かれたコイルの下の部分の「カウンターポイズ」が、電波放射に際して重要な働きをするアンテナであることと、私の場合、ラジエータもカウンターポイズも、オリジナルのマイクロバートではない寸法で運用することが多々あり、ここでは他の方への説明がしやすいように「上エレメント部分と下エレメント部分」という言葉を使って説明するようにしました。その辺の詳しい事情は、最後に「変なアンテナ!」の稿で紹介します。

 いろいろと考えてみると、ここでは「マイクロバート」と称するよりも、本当は短縮型のコブラアンテナです、と紹介する方が良かったのかもしれません。

 

 全体的には、

1)このアンテナは、1/2λ垂直ダイポールの片側エレメントを短縮したアンテナです。

  (マイクロバートにはオリジナルタイプと同軸分離型があり、オリジナルタイプは、

   コブラアンテナのラジエータ(=上部エレメント)が短縮された形をしています)

 ⇒垂直ダイポールは放射角が低くDXに向いたアンテナですが、ローバンドでは長さが長く

  て設置が難しい。それで、上エレメントにコイルを入れて短縮し、下部エレメントの上端

  =電流腹となる部分を、なるべく上方に設定した構成で設置します。

 ⇒地上に1/4λの電線を垂直に立てた構造のグランドプレーンアンテナに比べ飛びの良い

  アンテナになると考えられます。

2)部品は主に、以下で構成されます。(ここでは、オリジナルタイプのみ解説します)

 ・高周波チョークコイル

 ・下部エレメントとなる同軸部分(約0.2λ)

 ・上部エレメントとなる単電線部分

  (マイクロバートは4700/周波数の計算で長さを設定しますが、0.016~0.2λの長さで

   作ってアンテナとして機能します)

  材料は、アルミパイプ、ビニル電線、アルミ線など。

 ・エレメントを支えるポール

  (導電帯以外=グラスファイバーポール、竹竿など。木の枝に釣り下げるのもアリです)

3)給電点インピーダンスは50オームくらいで、マッチングユニットは不要。

 

 特徴として、

1)グランドプレーンで使用するような多本数のカウンターポイズが不要で面積を取らない。

  ⇒通行者に対する安全度が高い。ベランダでも運用可能。

2)設置が容易で、周波数調整も容易。

  ⇒移動向き。家の中でも調整できます。

  ⇒長い同軸ケーブル部分は、地面に広げ置きするか、トグロ巻きで置いて大丈夫です。

3)飛びは、垂直ダイポール並み(か、それ以下)。1/4λ以上の高さに設置した水平ダイ

  ポール位。ローバンドに向いています。(ハイバンドでも無論使えますが)

  ※飛び性能は、ポールの長さに依存します。無論、長い方が良いです。

  ※垂直に設置するのがベターですが、斜めに設置しても水平に設置しても動きます。

   (中心周波数とSWRは若干変化する)

   国内を狙うなら、下部エレメントを斜めか水平に近く設置します。

 

 欠点としては、

1)下部エレメントが放射に関与するため、導電体ポール(金属など)が使えない。

  ⇒同軸分離型として、斜めに下ろす方法は在ります。

   ※カーボン入りの釣竿は不具合です。

2)多バンド化が難しい。

3)雨天の場合などに、若干の周波数調整を行う必要がある。

4)チョークコイルで電力ロスが発生する。(全体の数~20%程度)

5)ポールの上げ下げが多いので、怪我に注意!

制作方法(1.8MHZ~28MHZを対象としています)

 最初に、実例写真を載せます。

 3.5MHZ用のマイクロバート一式です。

・上部エレメント=1.2m(ビニル線)

・コイル=Φ22、0.08*30リッツ線300回巻き

 (コイル大きさ=20cm。線長さ=21mほど)

・下部エレメント 同軸1.5D2V 15~16m

・チョークコイル

 =FT114-043にW1JR巻き10回

 (3.5MHZなら、もう少し多い方がベター)

 

 重さは300gです。連続では20W程度までOKですが、チョークのみ少し大きくすると50Wでの運用は可能です。

 5m程度のポールでも十分運用でき、国内向けなら3mポールでも交信は可能です。 

 

 

 

 18MHZの例を図解してみました。

 

 構造は簡単で、チョークコイルから先の同軸ケーブル(0.2λ)と単電線(0.016λ~0.2λ)部分がアンテナです。

(チョークコイルで高周波が送信機に戻らないようにするので、この部品は必須)

 

 トロイダルコアには同軸ケーブルを数回巻きます。(18MHZなら8回程度)

ケースに入れなくても問題なく動きます。

 

 以下に解説しますが、

上エレメントの長さは、0.016~0.2λの範囲で、使用者の思う辺りで決めて良いです。(ただ、インピーダンスの最適点はあります)

 

 アンテナアナライザを見ながら、目的周波数でSWRが下がるように、上エレメントの長さで調整します。 

 

個別ユニットの制作

[高周波チョークコイル] 重要部品です!

 取り扱う電力によって、コアと使用同軸ケーブルを選択します。表記は、CWでの通常/コンテスト運用での電力です。

1)20wまで(FT8なら10W以下)

  コア:FT114-043かFT140-043 1個 同軸:1.5D2V

2)100Wまで(FT8なら40W以下)

  コア:FT240-043 1個 もしくは FT140-043 2個 同軸:1.5D2V

3)200Wまで(FT8なら75W以下)

  コア:FT240-043 2個 もしくは、FT140-043 4個 同軸:1.5D2V

4) 500w程度

  コア:FT240-043 6個

  同軸:1.8MHZは1.5D2Vで良いが、他は2.5D2V以上を使う。

 コアは小さいもので300円程度。FT240だと2000円程度です。複数使いの時は、重ねて両面テープで貼っておき、インシュロックで止めます。

 

※移動用では、下部エレメントになる同軸ケーブルをそのままコアに巻き、先端にMオスやBNCオスを取り付けるので十分です。多バンドで使う場合は、チョークコイル部分を独立したパーツとして作り、入力と出力にMコネメスを取り付けます。

※使用周波数で5Kオーム以上のインピーダンスにするのが目安で、投入電力の数~20%程度をこのパーツが消費します。=熱が出ます。

[巻き方]

 W1JR巻をします。巻き数の半分を右側へ巻いて行き、そこでトロイダルコアの反対側にケーブルを送って、今度は逆方向に同じ巻き数、巻きます。巻き数の目安は以下です。

1.8MHZ:19から23回程度 3.5MHZ:13~18回程度 7MHZ:10~12回程度

10MHZ:8から10回程度 14MHZから上:6から9回程度

 ですが、実際は13~19巻きのものを一個作っておき、全バンドで使用しています。

(荷物が重くて持って歩けないため。高い周波数では損をしているなあ、と思いながらも)

 

[ケース]

 裸で設置するか、プラスチックケースに入れてください。

 入力コネクタのGNDと出力コネクタのGNDがショートすると、同軸の外皮を流れてほしい高周波がケースをバイパスしてしまい、チョークコイルとして働きません。

 

[実例の写真]

FT140-043を4個使ったものです。

(同軸は1.5D2V)

 CW=200Wまで、FT-8=75W程度までで使っています。左右はMコネメスです。

[上部エレメント]

 電線なら何でも良いです。トップ(先端)部分が強電界になってノイズを受けやすいので、丸型に丸めるのが良かろうかと思いますが、時によりけり。

 最初はアルミパイプで作ったのですが重くてポールが撓り、使えませんでした。兎に角、軽量に! アルミ線でも、同軸の芯線でも、同軸そのものでも、ビニル電線でも、何でも大丈夫です。(2個のクリップを使った50cm程度の装置調整用の電線が便利です)

 

 マイクロバートは、4700/周波数、を目安に長さを決めますが、私の場合は反対で、「まず思った周波数に向くだろうというターン数でコイルを巻き、そのコイル+適当な長さの電線で同調周波数を測り、エレメント長さが自動的に決まってしまう」というような作り方をしています。

※目安は0.016λですが、これより長い分には充分に使え、コブラアンテナに近くなるほど、使用できる周波数のバンドが広がります。

 使用者の趣向で決めて良いかと思っています。(一応、表を載せます)

[下部エレメント]

 同軸ケーブルを使います。重量を考慮して1.5D2Vが便利ですが、1.8MHZでは700W程度まで。3.5MHZなら、500W以上は2.5D2Vとします。200W運用なら、1.5Dで十分です。(風対応でポールの上げ下げが必要かもしれませんが、固定局での使用も可能です)

 同軸の片側は、M型コネクタオスかBNCコネクタオスなどを付けます。コイル側は、芯線のみコイルに接続し、網線部分は綺麗にスッパリ切ってしまいます。

 長さは、0.2λです。※下部エレメントは、長さはラフです。

[コイル]

 実は、どういう作り方でも働きます。使う電線は、エナメル線でもビニル電線でもリッツ線でも、巻いたときに互いに接触しない線なら何でも良いです。難しいことを言うとQが高い方が良いとかはあるのですが、実用上は、重量の方が問題です。ここでは例を挙げて、低電力から高電力用までを考えてみます。

※ハイバンド用は非常に簡単に作れます。巻き数も10から20位で巻いて、後は上部エレメント長さで調整すれば対応ができます。(巻き数表の例は別途載せます) ハムフェアの会場で、18MHZ用0.2λの長さの普通の電線をポールに10回ほど巻いて、残りの部分をまっすぐ伸ばして上部エレメントとしたアンテナを作ったら、SWR=1.0のが出来上がりました。これでも運用は可能なんです。

 

1)50w程度まで(FT8は半分以下に)

  ボビン:東急ハンズなどで売っているポリカーボネイトのΦ22くらいのボビンが軽くて

  便利です。エナメル線は0.5mm径以上あれば問題ないです。(細いと巻きづらい)

  リッツ線は高いですが、0.08*30(=0.08mm径の細線が30本束になっているという

  意味)で巻くと軽くできあがります。

  疎で巻くのがベターですが、密巻でも問題なく動作します。

2)200W程度まで

  ボビン:科学実験用の試薬ボトルが使いやすいです。Φ40からΦ55程度のものが

  売られています。他には、ポリカーボネイトパイプ(厚み0.8mm程度)が良いです。

  アクリルパイプもOKですが、厚みが3mm程度あって重いので、ポリカがベター。

  水道用のエンビパイプは重くて、この用途には向きません

  7MHZ以下のコイルは大型となり、径の大きいペットボトルを切って使っておられる方が

  多いかと思いますが、寸胴のものが手に入りませんで、コイル巻が非常に大変です。

  ポリカパイプのΦ60程度の物をお勧めします。

  投入電力が多い場合は、線は疎巻とします。(Φ1mmのエナメル線密巻は、CWでも

  かなり熱くなります)

3)500Wを越えると

  エナメル線のΦ2mmだと、巻くのが非常に大変ですし重いです! それで、0.1*100の

  リッツ線を使います。0.08*30の二本使いも大丈夫かと思いますが、キンクが出来易く

  工作に注意を要します。リッツ線は、オヤイデ電気かラヂオ少年で売っています。

4)ポールに取りつけたときに、風を受けるのがこの部分ですので、細目の径のボビンで

  作ります。実用上はせいぜいΦ60まで。 

 コイルの実例写真を載せます。(18MHZ用)

・ボビン径=Φ30 0.1*100リッツ線20巻き

 (長さは7cm程度)

 

 ハイバンド用は本当に小型のもので大丈夫ですが、問題は3.5MHZと1.8MHZの高電力用です。

 巻き数も200を越えるような大きなコイルになり、重さも200g、300gとなってしまいます。

 

 下記写真は3.5MHZ用と1.8MHZ用で、500w用。

1.8MHZ用は3.5MHZ用の倍の長さです。Φ50~55

[ポール]

 実はこのパーツも重要です。竹竿でも棒でも、導電性以外なら何でも良いのですが、普通はグラスファイバー製の釣り竿が便利で良いかと思います。

 5m~6.3mくらいまでの長さの竿は、元径がΦ30程度あり、7MHZや10MHZのローバンドでも使えます。3.5MHZと1.8MHZでも、使えなくは無いですが、DXを指向するなら10mの長さのアンテナ用ポールが良いかと思います。(5000円から9000円くらいです)

 注意点は、上に重い物(コイル)が乗るので、スットン対策が必要です。

・ガムテで補強

・長めのインシュロック+柔らか材で繋目を縛る

・水道管やガス管を留めるステンレス製のバインドで留める

などがあるかと思います。状況によって、使い分けします。

 風による倒れ防止に、ステーを設けることも必要です。YAGIなどとは違って上部が軽いため、ポリエチレンロープでも大丈夫なことが多いです。(これも状況によります)

周波数の調整方法

[設置+周波数調整の方法]

 家で制作を行い、できあがったら、庭でポールを立ててアンテナを設置し(ガムテでポールに貼る・・・)、アンテナアナライザを繋いでSWRを見ます。

 マイクロバートの正規寸法で作った場合は、SWR=2以下のバンド幅は、ローバンドで20KHZ~50KHZくらい、ハイバンドで100KHZ~200KHZくらいかと思います。通常は、設置しただけだと、目的周波数の100KHZ程度上とか下かにいるかと思います。

 その場合、上エレメントの先端部を丸めたり、数センチの銅線を足したりして、周波数調整ができます。また、下部エレメントの同軸が地面で余っているなら、その置き方で調整が可能です。(トグロを巻くか、広げるかで結構変わるので)

 もう一つは、「チョークコイルの位置」で調整が可能です。地面に置くと周波数は下がり、10cmとか20cmとか地面から離すと周波数は上がります。この辺りは経験で・・・。

 また、コブラアンテナに近い長さのエレメントで制作した場合は、バンド幅が広くなって細かい調整は不要になります。その特性を考慮して、

[山岳移動などで調整をしなく使いたいなら、「コイル小さめ、上エレメント長め」で設計・制作して、無調整に近い形で持って行く]のも手かと思います。

 なお、私の場合は、「どんな場合でもSWR=1.5以下で運用するのが基本」と考えて、アンテナアナライザは毎回持参しています。 

実際の製作の手順例(ここでは14MHZを例に)

1)コイルを例えばφ30のボビンに20回ほど巻いて、上エレメントを取り付け、
  下エレメントも取り付けた状態で、チョークを介して室内でアナライザで
  共振周波数を測ります。MVの場合は、低い周波数から高い周波数まで見て行っても
  (例えば1.8MHZから150MHZまで見て行っても)、一か所でスーッと下がるところが
  あるだけで、目的周波数付近での一か所しか共振点がありません。Qは高いです。
2)例えばそれが14.1MHZだったとすると、エレメントを床に置いても、上エレメント
  を真直ぐに立てても、だいたい14.1MHZ付近です。
3)その状態で運転しようとすると、問題なく運転できます。QSOもできます。
4)外に持って行って立てると、地面の効果(対地面の静電容量)の影響で若干周波数が
  ずれますが、ほぼ14.1MHZ付近に居ます。
5)ポールがグラスファイバー製なら(塩水が付いていないなら)エレメントをポールに
  ガムテで張ろうが、ポールから外れて空中に垂れていようが、ほぼ14.1MHZで
  同調したままです。
6)その状態で、例えばカーボンポールを近づけると、2MHZくらい共振周波数が下がり、
  同調点もふらふらします。アルミパイプも同様です。
  エレメントのそばに導電性のものがあるのはダメです。
7)下に、ウォリスで運用したときの写真を添付します。天井の梁からポリエチレンロープで
  吊るした軒下アンテナです。だいたい100WくらいでFT8の連続運転をして5時間くらい、
  何の問題もなく動いていました。
  (下エレメントの這わせ方で、200KHZくらいは共振周波数の調整が可能です)

 

ウォリスのコテージでのアンテナの様子)

 

 写真中央少し上に、肌色のコイルが見えます。(φ22なのでかなり小さい)

 天井の梁から、ポリエチレンロープで上エレメントを真直ぐ吊り下げ、下エレメントの下端は地面に這っています。チョークコイルは、床の白い箱です(緑色の梱包用テープも見えますが)。

 このアンテナで、DXまで十分に飛んでおりました。

 

 MVは結構耳が良いです。Qが高いため、ノイズが小さいのがメリットです。日本の木造家屋なら、部屋の中に置いても国内くらいは10Wでも十分交信が可能です。(実際に遣って見ています)

おまけコメント

[変なアンテナ!]

 アンテナは、使用周波数の1/2波長の長さの電線で作るダイポール型が基本です。

送信機から送り込まれた電力が、1/2λの電線に定在波の形で乗って、そこから電波として空中に出て行く仕組みかと思います。

 端の部分は電圧が高く、中心部は電圧が低くて電流の最大点に当たり「電流腹」と呼ばれます。そのため、給電方法としては、通常は、真ん中から左右の電線に給電する電流給電の方法と、端から給電する電圧給電の方法が採用されます。

 では、今回のアンテナ(コブラアンテナを先に考えます)は、どうでしょうか?

 

 場所的には電圧給電の位置からの給電なのですが、高周波チョークを使って高周波の戻りを抑え、インピーダンス=50オーム想定で給電できます。普通に考えると、上エレメント部分と下エレメント部分の繋ぎの部分が電流腹最大点となって、ここが電波の一番出る場所となるかと思います。

 さて、では試しに、

(問1)上部エレメントだけを短くして行くと、どうなるでしょうか?

(答え)同調周波数が上がって行きます。

 なので、例えば18MHZで作ったアンテナでは、21MHZとか24MHZに同調して行って、

実はちゃんとその周波数でアンテナとして使用が可能です。

(本当は上下ともに0.25λで作るべきなのに、変ですよね・・・)

 では、

(問2)下部エレメントだけを短くして行ったらどうなるでしょうか?

(答え)同調周波数が上がって行きます。でも、問1とは上がり方が異なります。

    (変化の範囲が小さい)

  

 以上のようなことが起こりまして、上部エレメントと下部エレメントの長さが異なっていても、問題なくアンテナとして動作する、ことが確認できます。

 よって、

・或る周波数を目的に作ったシングルバンドのアンテナでも、上部エレメントを伸ばしたり縮めたりして、他の周波数でも使用が可能

ということになります。

(給電点のインピーダンスは無論、毎回、ジャスト50オームという訳ではありませんで、その付近であれば実用できる、と考えてのお話です。実用上は、「2割程度の周波数の差だと問題なく設定できる」レベルです。

⇒28MHZ用を24MHZでも。21MHZ用を18MHZでも。18MHZ用を14MHZでも。

 ですが、14MHZ用を10MHZで使う辺りになると、結構苦しいです)

 

 正規長さで作ったマイクロバートを或る場所で設置して、どうしても目的周波数でSWRが下がらない(2以上は問題外と思いませんか?)、というようなことが実際にはありまして、その場合には、他のバンド用のエレメントを使ってこの方法で試してみると、意外と上手く行くことがあります。

 

 では、

(問3)マイクロバートのコイルは、下部エレメントのすぐ上ではなくて、もっと上に設置したらどうか? また、上エレメントの中間に置いたらどうなりますか?

(答え)コイルが多少大きくなりますが、問題なく動きます。でも、重量が増してポールが不安定になるだけで、メリットがない。(そもそもマイクロバートの上エレメントは短いです)

 なので、基本的にマイクロバート方式の短縮法が優れているように思います。

 

(問4)複数バンドのアンテナは作れるか? 

(答え)コイルにタップを用意してSWで切り替える方法と、上エレメントを分割してSWで切り替える方法で実現は可能ですが、そうするメリットは? 

 実はコイルを二個用意して、7MHZと10MHZに使えるアンテナを作りました。

(10MHZで使うときに、補助コイルをショートするという発想)

 上手く動くんです、これが!

 アンテナ設置後に落成検査をして、その後、アンテナをいじってはいけない! というようなルールのお国がありまして、その対策として考えたのですが、雨が降ったりすると、いずれにしても使用前の微調整は必要で、あんまりメリットがないので止めることにしました。

 コイルをタップ付きのもので作るといろんなバンドで使えますが、基本的には現場では無調整で使いたいこともあって、シングルバンドのものをお勧めします。

 

(以下は余談です)

 無線機の送信回路の後にアンテナチューナを入れて、そこから長い同軸ケーブルでアンテナに給電する例があるかと思います。そのアンテナが、根元の部分で測定したときにも同調しているのであれば問題ないと思いますが、そうでない場合は、送信機端ではSWRが下がったように見えても、実は「同軸ケーブルを含めてアンテナとして動作している状態」で、よろしくないように思います。

 それですので、アンテナアナライザを用意して、アンテナそのものの状態を確認することができるようにしておくことが、大事なことかと思っています。

 計測器としては少しお高いですが、ぜひ、一台用意をされて、アンテナ制作を楽しんでいただければ、と思います。

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